【寄稿】第2回 熱海怪獣映画祭「狭霧の國」監督 佐藤大介

マット・フランクによるイメージイラスト

2019年6月、「第2回 熱海怪獣映画際」が開催されることを知った私は、Facebookのメッセンジャー経由でコンタクトを取っていた。丁度、シカゴで開催される怪獣映画のコンベンション「G-Fest XXVI」で上映する私の作品『狭霧の國(のショートバージョン)』の編集作業中だった。前年に開催された第1回は、たった1日だけ開催された映画祭であったが、クラウドファンディングでの活動やメディアの記事などから、怪獣映画の祭典を熱海で行いたいという主催者側の熱意が伝わっていた。さらに、小規模の映画祭でありながら、伊藤和典氏、井上誠氏、樋口真嗣氏、長谷川圭一氏という、怪獣ファンであれば誰もが知っているトップクリエイターたちが参加していたことも印象深かった。

狭霧の國:Howl from beyond the Fog


当時、私自身が熱海怪獣映画際と同じく映画館のない温泉地で開催されている映画祭「湯布院映画祭」の実行委員の経験があったことから、勝手ながら親近感をおぼえたりもした。そして第2回が開催されるとニュースで知り、いてもたってもいられなくなりすぐにコンタクトを取ったのである。そのときは、映画祭の規模もどういう形態になるかもわかっていない時期で、とにかく他の映画祭のように上映作品の公募があるのなら応募したいという旨を伝えた。11月であるなら、『狭霧の國』も完成している予定であったからだ。(実際に完成した……というか、人に見せられる状態に仕上がったのは上映日の1週間前であった)いつのまにか、熱海怪獣映画祭は前年と比較にならないほど大きなイベントとなっていき、『狭霧の國』は特別上映作品として上映してもらえることとなった。
上映会場は、元東宝の映画館だった国際観光専門学校熱海校。そんな場所で映画用の機材を使った上映が行えるのは、個人事業主が作った小規模インディ作品としては願ってもない素晴らしい環境である。また、私が初めて自分の意思で映画館に足を運んだ怪獣映画であり、今でも最も好きな作品である平成元年の東宝映画『ゴジラvsビオランテ』からちょうど30年後、しかも新たな元号の元年に上映できるというは運命を感じずにはいられなかった。上映の際、多くの怪獣映画ファンはもちろん、尊敬するクリエイターの方々にも観ていただけたのは、本当に夢のようであった。(同時にものすごいプレッシャーでもあったが)エンドロール後の拍手で、私たちの大変だった日々はすべて報われた気がした。
ここまで来れたのは私だけの力ではない。ネブラの造形を引き受けてくれた村瀬継蔵氏をはじめ、Kickstarterキャンペーン時に英語圏の怪獣ファンコミュニティに告知を行ってくれたコミックアーティストのマット・フランク氏、私と一緒にひたすら造形物を作ってくれた松本朋大氏など、多くの人に助けられながら、熱海という怪獣の聖地となる場所にたどり着けたのだ。『狭霧の國』は、第2回 熱海怪獣映画祭をスタートラインとして、ようやく走り出したところだ。人形劇で怪獣映画というこの奇妙な作品は、熱海からいったいどこまで行けるのだろうか。私自身、ワクワクが止まらない。

右より 監督・脚本・撮影・人形制作・美術:佐藤大介、怪獣スーツ造形:村瀬継蔵、造形:松本朋大

狭霧の國ホームページ https://www.sagirinokuni.com

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